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SkyrimVRを一日中やりたかった
SkyrimVRやゼルダのような広大なオープンワールドを、VRでもっと長時間歩き回りたい。これがこの研究の出発点だった。
VRのオープンワールドは楽しいけれど、立って長時間プレイすると普通に疲れる。かといってジョイスティックで移動すると酔う。この「疲労」と「VR酔い」のジレンマをなんとかしたくて、アシストスーツを使ったVR歩行インターフェースを開発した。
既存のVR歩行の問題
VRで歩く方法は大きく分けて2パターンある。
立って歩く(足踏み・トレッドミルなど)
実際に足を動かすので没入感は高いが、長時間やると疲れる。
市販だとVirtuix社のOmni OneやKAT VR社のKatWalkといった全方向トレッドミルがある。滑りやすい皿状の床の上を専用シューズで滑らせて歩く仕組みで、足踏みよりは歩行に近い動きができる。ただ課題も多く、まず普通に疲れる。腰をハーネスで固定する構造なので上半身が不安定になり、その姿勢の動揺がVR酔いにもつながる。実際、トレッドミルでの姿勢不安定性とVR酔いの増加は研究でも報告されている。結局、オープンワールドを何時間も遊ぶような用途には向いていない。
座って移動(重心移動・ジョイスティック)
体は楽だけど、ジョイスティックは視覚と体の感覚がズレるのでVR酔いしやすい。椅子での重心移動は酔いにくいが、速度調整が難しかったり「止まりたい時にぴったり止まれない」問題がある。
結局、没入感と快適さを両立できる方法がない。ここをなんとかしたかった。
アシストスーツ × VR
着目したのが、建設現場や医療現場で使われるアシストスーツ。具体的にはアルケリス社の「Archelis FX」で、膝と太腿裏にサポーターがついていて、中腰になると体重を支えてくれる。「立ったまま座れる」デバイス。
このスーツにM5Stackとセンサーを取り付けて、VR歩行インターフェースに改造した。
操作方法
- 前進・後退: 片足を前に出して体重をかけると前進。バランスで速度調整もできる
- ジャンプ: 腰を落としてスーツに体重を預け、素早く立ち上がるとVR内でジャンプ。予備実験ではVR内で約20mまで不快感なく跳べた
- 停止: 両足で自分の体重を支えると完全に静止
立っているのにスーツが体を支えてくれるので、足踏みほど疲れない。かつ実際に体を動かしているので、ジョイスティックより酔いにくいはず——というのが狙い。
18人で比較実験した
4つの歩行方法を18人の被験者で比較した(ジャンプタスクは16人)。HMDはMeta Quest 3。
- アシストスーツ(本手法)
- 足踏み(Walk-in-Place): JoyConを靴に装着
- 着座重心移動: オフィスチェアに圧力センサー6個
- ジョイスティック: コントローラーのスティック
タスクは2種類。草原でコインを集める「歩行タスク」と、空中に浮かぶブロックを飛び移る「ジャンプタスク」。
結果:歩行の代替ではなく、新しい体験だった
VR酔い: 足踏みが最も酔いにくく、ジョイスティックが最も酔いやすかった(VASで有意差あり, p=.046)。アシストスーツは足踏みの次に酔いにくかったが、有意差はつかなかった。
疲労: ジョイスティックが最も楽で、足踏みが最もきつかった。アシストスーツはその中間。「足踏みより楽」という人もいれば、スーツの重さや操作の難しさで「一番疲れた」という人もいた。
操作性: ここが一番の課題。アシストスーツは4つの中で最も操作性が低かった。特に方向転換が難しく、「回転を諦めた」という参加者もいたほど。前進のために腰を落とすとスーツが地面に接触して回転できなくなるのが原因。
「スケートしてるみたい」
面白かったのが、参加者がアシストスーツでの移動を「歩行」とは認識しなかったこと。
- 「アイススケートしてるみたいで、没入感があった」
- 「飛んでるような感じ。VR空間を駆け巡ってる感覚」
- 「新しい乗り物、パワードスーツみたいだった」
- 着座と比べて「アシストスーツの方が没入感があった。両足を動かしているから」
セグウェイっぽい移動感になるだろうとは予想していた。それよりも、立っている姿勢自体が体験や身体感覚に与える影響の方が興味深かった。着座と同じ重心移動でも、立っているだけで没入感が変わる。
苦労した点:体格差
ウェアラブルデバイスならではの苦労として、被験者の体格差がある。膝と太腿裏のサポーターに圧力センサーを配置しているが、細い人だと膝の筋肉がセンサーに当たらず、反応しなかった。
被験者ごとにキャリブレーションで閾値を調整したが、体格による入力の個人差は完全にはカバーできなかった。「体重の乗せ方にコツが必要」「センサーに反応させるように姿勢を変えるタスクだった」といった声もあり、「思い通りに動く」と「センサーに反応させる」の間にギャップがあった。
おわりに
アシストスーツ型VR歩行インターフェースは、従来の歩行の代替としてはまだ課題が多い。ただ、パワードスーツやスケートのような「新しい移動体験」としてのポテンシャルはある。デバイスの特性に合ったコンテンツ——ロボットの操縦やスケートのような体験——と組み合わせれば、独自の没入感を提供できるはず。
SkyrimVRを一日中やるという夢にはまだ遠いけれど、次の設計ではスーツの軽量化とセンサー配置の最適化を進めていきたい。